【実践事例3】“バラバラ現場”に共通ルールと成長の仕掛けを

― 土木施工会社が離職率22.4%→9.8%、手戻り工事1/5に削減した変革の軌跡
◆ はじめに
中部エリアを中心に公共・民間の土木工事を手掛ける施工会社様。
社員数約90名、年間30件以上の現場を抱える中で、現場ごとのバラつきや若手離職が深刻化しているというご相談をいただきました。
「ベテランは頼りになるが属人化している」「若手が育たず辞めていく」
組織としての成長を止めかねない状態に、F6 Designが本質的な解決に向けて伴走しました。
◆ クライアントが抱えていた課題
初回の経営層ヒアリング、現場訪問、リーダー層への個別インタビューを通じて明らかになったのは、組織と仕組みの未整備による“現場まかせ”構造でした。
① 現場ごとに施工精度が異なる
ベテランが仕切る現場ではスムーズに進む一方で、若手・中堅が中心の現場では図面ミスや施工漏れが頻発。
作業後にやり直しが発生するケースも多く、**月平均5件の“手戻り工事”**が発生していました。
② 所長ごとの報告レベルに差がある
現場所長が提出する進捗レポートの質と頻度がバラバラで、本社が現場の実情を把握しきれない状況。
「報告が来ないと何もわからない」という声が、社内で常態化していました。
③ 若手の定着率が低下し、3年以内離職が加速
特に施工管理職において、20代の退職が続出。
「誰も教えてくれない」「責任ばかり重い」といった声があり、現場任せの人材育成では限界があることが明確でした。
◆ F6 Designのアプローチ
私たちが重視したのは、属人的な現場管理から、組織的・再現可能な仕組みへの転換です。
“何となくやっている”を“仕組みとして定着させる”ため、以下の施策を展開しました。
1|全現場共通の「施工完了チェックリスト」の導入
- 各工程の完了ごとに確認すべき30項目のチェックリストを開発
- 紙とデジタル両方で運用可能にし、現場の状況に応じて柔軟に対応
- **「検査前に見るべきもの」「社内承認が必要な工程」**など、失念しやすいポイントも網羅
結果として、ベテランでも新人でも一定の品質が保たれる基準が整備されました。
2|月次振り返り会議へのファシリテーター参加
- 毎月1回開催される現場所長会議に、F6 Designが**“第三者の目線”として参加**
- レポートの提出率や質に対し、定量的なフィードバックを導入
- 他現場との比較や成功事例を紹介することで、学び合いの文化を醸成
参加者の発言が増え、「他の現場でこんな工夫してるんですね!」といった横連携が生まれる会議へと進化しました。
3|若手リーダー研修(階層別)設計と実施
- 入社1〜3年目、4〜7年目、8年以上の3階層に分け、レベル別育成カリキュラムを設計
- 内容は「現場段取り」「部下指導の基本」「工程管理シミュレーション」など、現場で“すぐ使えるスキル”重視
- 各層で「自身の振り返り」と「役割意識の醸成」に注力し、“責任を持てる若手”を育成
研修後には、「初めて“自分の現場”を持てる気がした」という声も多く寄せられました。
◆ 得られた成果
約9ヶ月間の継続支援の中で、以下のような成果が数字と体感の両面で表れました。
✅ 手戻り工事:月平均5件 → 1件
チェックリストの活用により、図面ミス・確認不足・申請漏れなどが大幅に減少。
現場スタッフの間でも「これ見た?」が共通言語になり、ミス防止が“文化”になりつつあります。
✅ 所長のレポート提出率:58% → 100%
提出必須とするだけでなく、フィードバックを返す運用をセット化したことで提出意義が明確化。
所長からも「振り返る時間が逆に助かる」という声が出てきています。
✅ 離職率:22.4% → 9.8%(翌年)
とくに若手層において、「何をすれば良いか分かる」「相談先がある」といった声が多く、入社3年未満の離職者がゼロに。
現場責任者も「人が定着して初めて、改善も始められる」と実感されていました。
◆ クライアントの声
「“土木の現場に仕組みなんて”と思っていたが、ちゃんと設計すれば定着するんだと気づかされました。」
(統括部長)
「チェックリストや研修が、現場の自信につながっている。うちの文化がようやく“人を育てる側”に回ってきた気がします。」
(所長・30代)
◆ まとめ
この事例は、施工品質・報告制度・人材育成という「現場を支える三本柱」が機能することで、定着率・品質・コミュニケーションすべてに好循環が生まれた好例です。
F6 Designは、“現場は現場任せにしない”。経営と現場の間をつなぐ支援を、組織に最適な形で設計・実行いたします。